白と黒の造形

色彩の世界はひと先ず忘れよう。忘れたまえ。こんなに豊かな、美しい世界が、真白い雪の恵みによって展開されるのを、人々は知っているだろうか。

自然は絶えず造形している。何年も、時間にはおかまいなく、あせりもせず、くさりもせず、いつも清純で、青年のように若々しく、老人のように注意深く。

宇宙の片すみ、この地球と云う遊星の上でも、自然は計り知れない不思議な形象を、人々の網膜に気まぐれに残して行く。繰り返し、本当に気まぐれに、例えばある種の画家のように。

白と黒の造形、すべてに色彩の極限、もっとも単純で、もっとも複雑な色彩、雪と大気があやなすこの自然抽象の形態はあたかも古い波斯(読み:ハシ、意味:ペルシャ)の絨毯のように、多くの思い出と、伝説と、奇妙な過去を恐らく持っているかもしれない。

大地をとりまく気圏の裡(うち)に、無意識に、必然的に、あるいはなんらかの意思のもとに、形づくる無限の様相は、色彩を越え、偶然を越え、純粋な美の世界へと近づく。

白と黒、それはもはや光と影ではなく、物質をかたどった一つの光として我々の目に映じて来る。音のように木魂して叫び響きつつ輝いて、永遠の姿を瞬時に定着する。

「靄こめて降る雪は音なくつもり……」

(駒井哲郎『白と黒の造形』より)

20140103-202032.jpg

admin について

NATSOUMI | photographe plasticienne - visual artist - 写真家
カテゴリー: blog タグ: , パーマリンク